子どもの権利擁護

子どもの権利を守る取り組み(権利擁護)についてみてみましょう。

 

(1) 権利擁護とは

 

色々なサービスを活用している利用者や、利用児が、
自分の権利やニーズを表明することが難しい場合に、
本人に代わって弁護したり擁護したりすることを
「権利擁護」といいます。

 

この権利擁護は、「アドボカシー(Advocacy)」と呼ばれることもあります。

 

・権利擁護の活動

 

権利擁護の活動には、大きく分けると2つのパターンがあります。

 

@ 利用可能なサービスを利用できないときに出来るように促進する。

 

  サービス利用中に苦情や不服を申し立てたり、
 そのことに介入する。

 

A 社会活動法(ソーシャルアクション)として社会的に不利益を受けている集団の権利や
 ニーズを代弁詩制度を充実させる。

 

(2) 子どもの権利擁護について

 

日本で行なわれている子どもに関する権利擁護事業の内容体系は、
@健全育成系、A教育系、B子育て支援系、C要保護児童の自立支援系、
D人権意識啓発系の5つに分け、さらに、具体的な活動別に分けています。

 

 1 相談: いじめ相談、教育相談、不登校相談、虐待相談、健全育成相談など

 

 2 啓発と情報公開: 子どもの権利啓発、権利ノートの作成、子どもの人権講座など

 

 3 社会参加や意見表明: まちづくり、子ども会議など

 

 4 ネットワーク: 地域ネット、虐待防止ネット、子育てネットなど

 

・子どもの権利擁護事業の例

 

子どもの権利擁護事業には、国際的なユニセフや、
児童福祉施設などを利用する子供たちの権利擁護までざまざまなものがあります。

 

 1 ユニセフ(国連児童基金:United Nations Children's Fund)

 

  戦後の子どもの緊急救済を目的とした国連国際児童緊急基金(UNICEF)は、
 1953年国連児童基金:United Nations Children's Fund)に改称し、
 一般的な児童福祉、特に開発途上や自然災害、内乱地域における
 子どもの健康や栄養、保健や医療、
 教育に関するさまざまな国際的援助活動を行なっています。

 

  1996年、ユニセフは、創立50周年を向かえ、
 これを機に「子どもの権利条約」を規範として
 「ユニセフの使命(The Mission of UNICEF)
 を採択しました。

 

  この「ユニセフの使命(The Mission of UNICEF)の内容は、
 子どもの「ニーズ」に対応するだけではなく、
 「権利」を保障していくというものです。

 

  さらに、「世界子供白書」を発行し、5歳未満で死亡する子供の報告、
 少年兵として戦争に参加している子供の実態、
 開発途上国における児童労働について等の調査報告等を行い、
 国際的視点で子供たちの権利擁護を行なっています。

 

 2 オンブズパーソン制度

 

  オンブズパーソンとは、公的制度に対して、市民的立場で監視し、
 苦情を申し立てる等の対応を図る人のことを言います。

 

  以前は、オンブズマンと呼ばれていましたが、
 性差(ジェンダー)視点により、オンブズパーソンが一般的になっています。

 

  日本では、法的なオンブズパーソン制度はありません。

 

  しかし、地方自治体や民間団体には導入されつつあり、
 子供オンブズパーソンとしては、たとえば、
 兵庫県の川崎市子どもの人権オンブズパーソン制度や、
 神奈川県のかながわ子どもの人権審査委員会が、
 子供相談・関係調査・救済活動を独自に行なっています。

 

  また、埼玉県の鴻巣市、神奈川県川崎市、藤沢市などでは、
 子ども独自ではありませんが、市民オンブズマン制度があります。

 

  3 面接や電話等での相談、ネットワーク、啓発事業など

 

   子どもに関する色々な相談ごとを、面接や電話で受け付けています。

 

   場所によっては相談だけでなく、具体的に権利擁護をシステム化するため、
  各関係機関や団体と調整するネットワーク団体も構築されています。

 

   具体的な団体は、たとえば「子どもの人権110番」、「弁護士会」、
  愛知県の「CAPNAホットライン」、「子ども虐待防止ネットワーク・あいち」、
  大阪府の「子どもの虐待ホットライン」、「大阪児童虐待防止教会」などがあります。

 

   啓発事業としては「CAPセンター・JAPAN」は、
  子どもへの暴力防止(Child Assault Prebention)をプログラム化し、
  全国各地で講座や研修会を開いて、子どもの権利擁護を啓発し、推進する活動を行なっています。

 

  4 子どもの権利ノート

 

   1995年、平成7年に、大阪は、子どもの権利条約の精神に基づき、
  施設に入所する子どもの手引書として、その権利を知らせることを目的とした
  「子どもの権利ノート」を作成し、発行しています。

 

   そして施設職員の研修を重ね、児童擁護施設などに入所している児童全員に
  配布しています。

 

   子どもの権利ノートは、子どもが見ても分かりやすいように、
  子どもが理解しやすいタイトルで構成され、
  担当の子ども家庭センター名や電話番号、担当のケースワーカーの氏名、
  子どもと家庭電話相談室の電話番号が個人で記入できるようになっています。

 

   そして、第三者機関が権利擁護できるような仕組みになっています。

 

   子どもを権利の主体として位置づけられていて、 
  子どもの意見表明権や知る権利が保障され、
  第三者の参加による苦情解決をシステム化しているものといえるでしょう。

 

  5 苦情解決の仕組み

 

   2006年、社会福祉事業法が「社会福祉法」に改正されています。

 

   主な改正の内容には、「福祉サービスの利用制度化」、「利用者の利益の保護」、
  「福祉サービスの質の向上」、「社会福祉事業の範囲の拡充」などとなっています。

 

   福祉サービスの利用者は、サービスに不満があるときには、
  事業者に対して苦情や意見を申し出ることができます。

 

   そして、第三者が加わった苦情解決の仕組みの整備や、
  解決が難しい場合に備えて、各都道府県社会福祉協議会に、
  苦情解決のための「運営適正化委員会」が設置されています。

 

  6 ケア基準やサービス自主評価基準

 

   児童養護施設職員が、入所児童に行なうケアに関して、
  遵守すべき30項目を定めたものに、
  1994年の「北海道養護施設ケア基準(北海道児童擁護施設協議会)」
  があります。

 

   この「北海道養護施設ケア基準」の後、社会福祉増進のための
  社会福祉事業法の一部を改正するなどの法律により、
  本格的に「児童福祉施設サービス自主評価基準」が作成されました。

 

   全国社会福祉協議会がまとめた自主評価基準の概要は、
  @子どもの権利擁護、Aサービス内容、Bサービス実施体制、
  Cサービス評価の実体性の4つが柱となっています。

 

   たとえば、@子どもの権利擁護の項目には、
  「施設長の姿勢、権利擁護に対する職員の姿勢、子どもの意見表明、
  自己決定」、「子どもの知る権利、プライバシーの尊重、体罰の防止」、
  「思想や良心、信教の自由、不適切なかかわりの防止」、
  「不満や不服の受付のあり方、不満や不服を解決する仕組みの構造」などの項目が挙げられていて、
  それぞれの項目ごとに詳しい具体的な内容が明示されています。

 

   「施設長の姿勢、権利擁護に対する職員の姿勢、子どもの意見表明、
  自己決定」の部分で、「権利擁護に対する職員の姿勢」では、
  「人権侵害などの行為を全く行わないように徹底している。」、
  「常に子どもの最善の利益の観点に立ち、子どもの権利を擁護している」
  などを、評価基準として挙げています。

 

  7 第三者評価事業

 

   権利擁護に関する動きのなかで「第三者評価事業」の導入に注目が集まっています。

 

   第三者評価事業は、ケア基準やサービス自主評価基準、
  福祉サービスに関する苦情解決の仕組みに継ぐもので、
  児童福祉施設サービスの質の向上のために2002年から設けられたものです。

 

   *社会福祉法78条(福祉サービスの質の向上のための措置等)

 

    社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の
   評価を行なうことその他の措置を講ずることにより、
   常に福祉サービスを受ける者の立場に立って、
   良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない。

 

    国は、社会福祉事業の経営者が行なう福祉サービスの質の向上のための
   措置を援助するために、福祉サービスの質の公正かつ適切な評価の実施に
   資するための措置を講ずるよう努めなければならない。

 

   この社会福祉法第78条により、児童福祉施設には、
  時代のニーズに合った福祉サービスの質の公正、
  かつ適切な評価を受けるための努力をする必要が出てきました。

 

   第三者評価事業は、施設が今まで子ども達や保護者に提供してきた
  援助や支援内容について自己評価し、その施設を利用している子ども達や
  保護者からもアンケートによる評価を受けます。

 

   さらに、これらを踏まえ調査者でもある専門家が、
  専門的・客観的な評価を行ない、よりサービスの質を高めていくことが必要です。

 

   そして、第三者評価事業の行為は、児童福祉施設の設備や運営に関する基準による
  行政監査ではありません。

 

   この目的は、あくまでも、時代のニーズに合ったサービス水準の向上です。

 

   社会法人全国保育士養成協議会児童福祉施設福祉サービス第三者評価機関
  (HYK福祉サービス評価機関)の現在の評価を見てみると、
  その概要は「福祉サービスの基本方針と組織」、「組織の運営管理」、
  「適切な福祉サービスの実施」、「利用者の尊重」の4つの評価対象で構成されています。

 

   今後も、このような課題に対して、より充実した実施体制の整備をし、
  子どもを守るための体制を確立していくことが必要です。

 

   そうすることが、施設を利用する子ども達の権利養護につながるので、
  福祉サービスの質が向上するのです。